全て電波の所為です。
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2570 | 夜の帳下ろし、 寄ると止まる灯火から、 寄る瓮の水のお目溢し、 鳴き響む音はいつの声。 今更に届いたが、 いささ小笹、歌沙汰、 夢更更探されず、 漣さざめく、その川原。 さはれ、鵲の橋さえ、 遮られた、浅茅の縄。 ささらおと鳥、 可惜夜先立ちて、 さらばえて、ささほうさ。 定定逆らう、 ささがねの蜘蛛の振る舞い。 明月地に堕ちて、 白日は度を失って、 白紙の波止場、凪ぎ渡り、 生は奇なり、浮烏。 白波の夜夜を、 知らないと旅夢の余流。 星合をまほしがれば、 雨夜の星も雨宿り。 哀れ、洗われ、雲を当て、 曇霞、掠め愁う。 曇夜、 知られで下延したため、 水下経、 白魚の篝も、 霞まずに星迎えを、 心待ち。 淡島、敷島も、 終いには逆しまの星回りで、 あからしまかぜの節回しは、 あなたに向けて。 十四年の夜を越えて、 全て電波の所為です。 |
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2149 | 竹の春は風の日より、 待宵も待つ、天つ少女。 天つ罪、包み隠せど、 摘み、積もる芹。 罪有りて配所の月を、 見つめた継ぎ接ぎの月日は、 あなたとならば雨夜の月も、 天満月のよう。 鵲の鏡の咎も、 日日並べて虧けたから。 月草の仮偽は掻き消えて、 移る現の夢。 突き崩せぬ潮汐の鍵は、 移ろわぬ虚。 月の桂は木染月の、 日陰の蔓から、 積み重なる朝夕の限り、 尽きず見えますか。 十返花は反らばに、 端から白浜波に消え、 隻影の千代待つの木へ、 無常鳥の声。 非時香菓さえ、 形許りの常しえなら、 吹き頻くような苦悩の身は何故、 未だ立ち別れを、 怖れるか。 己が故か。 橘鳥は鳴いた。 遠廻しに物語は、 余所がましく騙し、 烏滸がましい物笑いだけは、 もう終わらないで。 柳因の巡る無人の地、 初に、海に芽吹き、 無韻の詩の兎が伝えた、 拙い追憶。 梢そよがす風、数えて、 枷言葉。 濡ぬ雨から逆水。 全て電波の所為です。 唐棣花色は冴えを捧げて、 跳ねず恋いる兎。 阿摩羅も余さずあからめさす、 贖いの蛙楽。 足掻に吾が花を挿すなら、 ささはなさ月には、 茜さす朝に諍う夜が、 雨障を止む。 結わく憂惑、芙蓉の烟、 百万里外の心。 月夜、見おこせ給へ。 |
ベータ | 146 | |
合作 | 2753 | ノートに書き記した、 光を透かした。 生ずるバス停は曖昧で、 消えゆく信号と綯い交ぜに。 果てにあるべき時計と、 教科書は迷子。 留守番をしていた丑三つ時、 瞼を閉じてみたけど。 扉は開かず、 鳴かず飛ばずの烏。 静寂の空に飛び込んで、 目を開けたら消えていた。 外套は歪んでいるけど、 私はベータですか? 泣いていたのは誰ですか、 全て電波の所為です。 掬ばれた水の上、 未来を溶かした。 想像が阻害する靴の中、 見えない形代は誂えに。 化けたまま辟易した、 走馬灯の中。 待ち惚けしていた逢魔が時、 月に手を伸ばしたけど、 猿は溺れる、 矯めつ眇めつ眺める。 軋む深更切り裂いて、 目を開けたら泣いていた。 街灯は歪んでいるけど、 あなたはベータですか? 泣いていたのは何故ですか、 全て宵闇の所為です。 嵩んだ筆箱と、 意味のない標識。 浅慮だけがいない街と、 多々ある排気口。 逃げ出した定規は、 渙然氷釈の定めでしょうか? 外套は歪んでいるけど、 私はベータですか? 泣いていたのは誰ですか、 全て電波の所為です。 街灯は歪んでいるけど、 あなたはベータですか? 泣いていたのは何故ですか、 全て宵闇の所為です。 何時か忘れて仕舞うのでしょう。 |
た | 18 | |
380 | 嘶く影の様に、 模る街、 憚る日々。 宛ら未だ陶酔する、 歴と阻む零雨。 偶像と為りし者、 醜い亡き者は跋扈し。 誑かすのは、 日陰者と、 恙無い傍観者。 綻ぶ鳥居は然も、 淘汰された、 ただ凋落の一途。 赫灼たる明光は消え、 全てが終わりました。 囁く声の様に、 擬う齟齬、 叢がる意図。 宛も未だ狼狽する、 目下に潜む隘路。 傀儡と為りし者、 虚実に踊らされ安堵す。 邂逅するは、 欺瞞に満ちた、 揺るがない共犯者。 轟く吐息は然も、 謳歌された、 ただ凋落の一途。 赫灼たる月光は消え、 全てが終わりました。 綻ぶ鳥居は然も、 淘汰された、 ただ凋落の一途。 赫灼たる明光は消え、 全てが終わりました。 |
蠑・逕 | 30 | |
630 | 或る烏夜の玉響。 延いて、 春霞に問うた。 |
ハルシオン | 31 | |
544 | 有り触れた話をしようか、 夜空の星に願いを響く声。 目を逸らさずにただ見つめて、 雨の音だけが聞こえる。 擦れ違う言葉は溶けてゆく、 ただ気紛れで、 でも緩やかに。 透き通った世界の中で、 揺れている記憶に呑まれてゆく。 有り触れぬ話もしようか、 暗い夜空に浮かぶ星。 目を逸らさずにただ見つめて、 風の音だけが聞こえた。 擦れ違う視線は堕ちてゆく、 ただ気紛れで、 でも緩やかに。 瞼の奥に残るような、 夜に呑まれる迄は。 ゆらゆら、 影は消えて。 紛い物の憂いと成る。 それなら、 意味は消えて、 不釣り合いに、 全てが終わったの。 |