モネラ
か行恐怖症 | ||
泣きつかれ違う空を見る 影が笑う 蔑ろにされた鳥居と 乾いた風 不束者が壊していく 偽善者が虚構を作る ありふれた時間に閉じ込められている 常しえに 壊れた声を拾ってくれと 叫んで嗤われて 無くしたものが分からなくて 此処は治せない 見つけて欲しくて棄てられて 何処にもいないけど 誰もが忘れて愉しそうに 首を絞めている いつか見た夕暮れ街並み ぼやけていて おおよその失くした気持ちは 戻らなくて 贋作が憧れの的で 吐いた物語をドグマにして 崇高な真意もいつかは等閑に されてゆく 消された無数の忌み者は 酷く美しく 楯突いた痕を残さずに 何処かで生きてる 最後の上塗りの風景 遂に見つからずに 失くしたものが懐かしいんだ 戻りはしないのに 無邪気な喧噪に嫌気がさして 踏み躙られて尚、人を信じている 遠い遠い禍根の世に 手を取り合えたら 忘れないで欲しい いつかの今のこと |
月から光を見ている | 45 | |
810 | 月の裏に光り 混迷を止められず 含み笑いの疫病は 地に堕ちる 繋いでいく 角が立つ 孔雀石の街並み 旅を終える 夙に泣く 此処は元来より暗く 見つめている故郷はいつか 遠く、離れてゆく 縺れていく呼気よ想いよ 変わることもなく 見つめていた月の光は 二度と、見えないけど 解れていくあの繋がりが まだ愛おしいの? 尽きぬ昔噺 黎明の思い出も 無いもの強請りの人生 仕方ない 繋がりが消える度 悔いは増えていくけど 旅は未だ 続いていく 此処から抜け出さなきゃ! 見つめている故郷はいつか 穢れ、荒んでゆく 縺れてく呼気よ想いよ 何処へ消えてゆく? 見つめていた月の光は 今も記憶の底 縺れていくあの繋がりが 解けて待ちぼうけ ガラクタの鳥の聲とか あの星での記憶 壊れていく夜の光を 只管見つめている 嘗て彼の地に堕ちた星を 誰も覚えていない いつか!戻れる日が来ると ただ願っている |
学を衒う者 | 31 | |
289 | 揺れた黄金の葦 粉塵が覆う暮れの空 独り佇んでいた 智者は俯いて嘯いた 失くした俤 眼の奥に憑る翳 時が結く帰結を待つ 慟哭が聴こえていた! 虚妄が智を創る 振り翳す彼は赤子の様 傑物が慈悲を焼き払った 驕逸を孕んでいた 嫌悪が煮え返る 相容れぬ民は何処へ行く 染まる手は朱く滲んでいく 意味付けを手に入れる 愉悦がそこに在る 聾者をのさばらせ、弄する 不快な音を立て 終末が迫っていたのに 祝杯を交わす 気の知れぬ彼の身は 殺め、壊し、何を望む 奇怪さえ霞んでいた! 街は溶けていった 功利の欺瞞に惑わされ 因はヒトであったその名を 我々は知らずいる 不意に晴れ渡った 二つ目の日が目に焼きつく 愚弄されたなどつゆ知らず 滅びを嗤っていた 智者は目を伏せるか 遺された無辜の代物に 刃を入れ切り裂いたあの 血溜まりが底に在る 雨粒が滴る 荒んだ人為の理想郷 不幸の源泉に縋って 拘泥する 衒学者 |
ヴォイヤージュ | 8 | |
139 | 巡る名のない土地を 残照がまだ目を傷つける どこか寝ていたいのに 街並みは続いていく 今は昔の静謐を 夜もすがら求めている 枯れたアネモネも 睡る小夜烏も 移ろう季節に飲み込まれて 霧と消える 夙に吹く風も 翳る朧月も 揺らぐ世界の中に溶けて 色を落としていく 巡る名のない星を 暗澹がまだ僕を見ている 消えてしまいたいのに 旅はまだ続いていく 雲隠れになった君を 夜もすがら探している 枯れた心も 嘔吐く浮寝鳥も 虚な目に映す現を 忍び生きている 可惜夜も何も いつかの令月も あなたの声も聞けないなら もうそこにはなくて |
ちていのはなし | 24 | |
221 | まだ見ていた がらんどうは 夕日を食べ 溶けてった 地下鉄のホームの側には 化石たちが泳いでいる 飛ばない鳥たちと、ずっと 今際の際に住んでいる 欠 け た 階段を下って ガラクタに捨てられて いない人たちが住まう街に 迷い込んでしまうんだ、いつか 暗く寂しいのなら カイロだけ握りしめて でもね 空は目を焼くからさ 上を向く気にはなれなくて タマシイひとつ抱え 次の駅まで歩いた まだ見ていた 時計たちは 逆回りで、解けていく 地下鉄のホームの側には コーヒー缶がやがて積もる 飛ばない鳥たちもいつか 私をおいて飛んでゆく 賭 け た 階段の先には― 「暗くてよく見えない」 いない人たちが住まう街に 迷い込んでしまうんだ、いつか 暗く寂しいんだよ 凍えてしまいそうだよ 空が友達ならさ 片足だけ後に引けるが タマシイひとつ抱え 次の駅まで歩いた いない人の仲間に入れと 私を呼んでる声がする 暗く寂しい世界 凍えた腕が剥がれた 今も空はそこにあるのだ! いつも私を見張っている タマシイを半分こ 捨てきれずに歩いてく |