全て騙り手の所為です。
ヴィルナタ | 318 | |
11206 | 独りの旅人が、街を往く。 出口の前、近づき、ふと、微笑む。 忘れてしまうのですか?静けさとか、夕凪とか、 あなたに所以する物が変わりゆきます。 揺らぎの瀧角が、絵に凌ぐ。 荒びふるびた町に、雨が流る。 赤い傘を差していた、「静けさとは?寒凪とは?」 事象は陽が沈み夜へ、日日を霞めて。 切り替わる時と、振り返る其の前、 慫慂する旅人は、故郷を思い出す。 切り替わる刻と、振り返る間も無く、 逍遥する旅人は、双六の代に。 |
エングレー | ||
傘を握ったまま、 居た、一人の影が地に映っていた。 陽の光は沈んで暗く、 打ち付ける粒が地面に落ち砕けた。 路往く人は皆、 あまりに静かで 濡れた窓が光る夜、 迷い込んでしまった。 ここは年中雨が降る暗く沈んだ街 どれだけ、歩いて歩き続けても 見つからないのでした。 輪を描いて波は消え去り、 砂を固めては 劣を為していました、 手は解ける夜を混ぜて、 靴を脱ぎ棄てて、 誰も彼も、砕けていく 差し込む光も見得ないで。 何時かこの街はゆがんで、 歪み煤けて往く。 どれだけ歩き疲れてもまだ、 出口は見えないのでした。 ここは年中雨が降る暗くて廃れた街 どれだけ歩いて歩き続けても、 見つからないのでした。 それは歪んだ街の中、 出られぬ旅人よ! 滴る雫に己を負かせて、 ただ流されるしか無いの? 忘れ去られて往くのでしょう。 |
あやふや[short] | 137 | |
3370 | 暮れた空、 見えなくなった標識の色が、 凪いだ風、 思い出させるは、 黒い影。 開いた口 ふさがらないのは私の方。 きらめいたままの ただあなたの声を描く。 「それだけでいい」と、 心の中、 うたがっているそぶりも 見せないであなたは どこへ行くの? 未だ忘れられてもいないのに! きっと、 きっと、 きっと、 きっと、 追い付かれること分かっていたでしょう? どうか、 どうか、 どうか、 あなただけは ここから逃げて背を向けて。 |
ルトロヴァイユ | 769 | |
31832 | またいつか。 街を往くあなたの背中 足跡、探し辿っていた。 「傘を差すことも忘れて、 雨に打たれて、 立ち尽くす 貴方のためだ」と、 「私のせい」と、 言う、あなたの声がする。 痛かった記憶も、 愛情も熱も、 全て歌にしたから。 旅を続けよう。 歌を唄おう。 いつか忘れられるとしても。 波を紡ごう。 涙と共に、 茜落ちる窓に手を振ったの。 「街を出た貴方の言葉、 美しい色、 でも、暗く。 何時か描いた景色も、 毒の姿がちらついて。 加速する記録、 想像と事実の狭間に立つことを、 旅人は言う。 『詩と同じ』と。 雨の匂いに染まる道に 足跡つけた記憶はやがて、 夕焼けに照らされ消えるから。」 轟いた青い光に。 偽物でも、逃走でも、 命の色がある。 氷雪の積もる道を 振り返らずに。 旅を続けよう。 詩をうたおう。 いつか遺れられるとしても。 浪を紡いだあなたのように いつか画ける、そんな気がしたの。 旅を続けよう。 時は流れて。 誰もがきっと描く故郷も、 空の青さも、 見えなくなっても、 流れていく時に抗うのは、 いつか見た色を貽す為。 |
億[short] | 107 | |
2377 | 揺れた窓際の音、 欠けた枯葉のような言葉。 濡れた足跡の後悔が、 擦れた心の中写していたの。 川の流れを超へ、舵を興せば 向かふ側に届くと謂うだろう。 それなら、 と声をあげ そそのかされていたの。 冷笑、徒労、回帰を討つ 立ち尽くす熱を帯びる夜、 怒りを込めた詩に気づき傷つけられた億の 感情、懺悔と 脳、揺れるような響きの 嘘、嘘、 出鱈目な光量を 集めていたのもそう、 あなたのこと。 |