如何か、忘れぬ様に。
双奇症の飾り | ||
370 | 音の捻れが既に聴こえていた、 薔薇の華然り。 まるでアゲハが飛び回るように、 優雅を気取る庭の中で。 雨の日、 水溜り踏み、 何も獲れない筈だ。 あれ? 何かが狂っていて、 拳の中に握った。 空から降った衒ったモノの名を、 私は選ぶことはできなくて。 水っぽい冷たい感触を、 味わうことになったのです。 あの夏に買ったラムネが、 しゅわしゅわわと泡を吹いて。 カトラリーで突かれる絵が、 ルナが待つと言われ悔いて。 君の言葉で傷ついて、 君の言葉に愛されて、 君らが壊すようになり、 誰も何も思わないって? 空から降った衒ったモノの名を、 私は選ぶことはできなくて。 水っぽい冷たい感触を、 味わうことになったのです。 青色と灰色の混ざり合う視界、 お下がりのリボンを付けて。 進めど十字架に磔にされ、 月夜の明かりの下に。 |
想狂紫翠 | 77 | |
742 | 嗚呼、裏切った僻みの叫びを、 貴方の所為と歌って、 鏡を壊し揺らぐ視界へ。 涙流すだけ、 下がる宵の中、 堕ちていく視界の中に、 響く宵の空、 鮮やかに死して、 願うだけなのですか? 罪科の絵に落ち行くものは、 諫める夢音の花は消えてくだけなの。 嗚呼許しておくれこの僕を。 死音の響く彼方の碑、 低廻するこの時の中、 消えてしまうだけなのです。 溶けるあの記憶たちは、 もう戻りやしないから、 切り裂いた思い出は爆ぜた。 |
蒼に架ける形貌 | 50 | |
867 | 現世の中祓う際の華が、 遊子、鞘翅し、哀れと嘆く硝石の意趣が、 滞るのだ。 あなたが示す、症歌の意味はないと、 囁く声。 嗚呼、絡まる想い狂う私は,響めくだけなの? 風月希うのみ、闇夜の中で、 曲がる嚢の目、 消える虚偽の音に苛まれてる。 置いていかないで! ただ願うだけ。 また騙されて、箱庭の中。 あなたが死者だと知るのはまだなのです! 抗えぬまま、朽ちて消えた。 最後の言葉取りこぼしては、 「もう行かないでよ!!!」と叫ぶ声を、 如何か忘れぬ様に。 僻む想狂と最古の空席、 壊れる歯切れ悪い時計が、 錆びた躰に映し出されるは、 ただの過去と遺言の花弁! 他の音に還る奏歌に、 帰りを待たぬ人々の狂歌を、 まだ足りないという叫びを混同。 可笑しくなっている! また注ぐ苦痛に対されて! 消されては、殺されぬものも、許されぬものも、 あなたに愛してもらいたくて! 掻いた音を遮る、水の声、 殺して、嗚呼殺して! もう何も無いんだ。 月夜は死ぬ。 外れた音の枷となる回答、 消えてしまえばいいんだ。 天誅! される夢の中にある、 あなたの想う宵の死奏傷管が、 消えてく嗚呼、消えてく。 僕の声も消えてしまうだけ、 さよなら消えゆく記憶の中で、 また会えるよ、泣かないでよ、 消える消える消える宵の中へと堕ちてしまった。 如何か忘れぬ様に。 如何か、忘れぬ様に。 |
赫の傅く夙(short) | 17 | |
266 | 水の声 泡沫夜、 迴冥の春呼ぶ小道、 錆びた音、途切れ消えてゆく。 如何か、忘れぬ様に! |
⌭[short] | ||
289 | 蔓延る愚かな思慮に、 覗かれた牢の中、 蹴られた腕についた傷、 胴元を照らした。 僕(やつがれ)には出来ぬ緑雨(りょくう)へと、 絡み骨を溶かす為体、 耳を澄ませ。聞こえるだろうか? 如何か、忘れぬ様に。 |