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私の時も忘れて、 佇む光さえ消してゆく、 屍から飛び出せば、 破滅の鐘が此方へ近づいた。 落とされた賽を振るのは、 瞬く季節の移り変わりで、 描かれた扉をこじ開けて、 音の出ない魂は眠る。 結われた糸が解け始めた、 涙痕で塗れたノートの文字。 最期に見えた波の子供の、 息詰まる終わりの歌。 現実をみた君の眼が、 キラリ、涙を浮かべた。 月明かりの差す方は、 閉ざされた春景色でした。 幽かに浮く黒い星が、 夜の帳を食べ尽くして、 窓辺から見えた世界は、 夢の様だと嘆きました。 絶たれた糸を紡ぎ直して、 汲み取られた水を苗に溢し、 渇きの果てに、 野に咲いたのは、 慰む金色の花。 現実をみた君の眼が、 キラリ、涙を浮かべた。 月明かりの差す方は、 閉ざされた春景色でした。 結んでは開きを繰り返し、 疲弊した魂は土に還る。 鳴り止まない欲望の声は、 日の出ずる刻を求め。 現実をみた君の眼が、 キラリ、涙を浮かべた。 月明かりの差す方は、 閉ざされた春景色でした。 現実から目を逸らしたら、 ふらりと蹌踉めきました。 陽の光が差したのは、 解けだした雪景色でした。 夕空が裏返る、 日は月と重なる。 灯る星が紅く染まれば、 この時を戻せますか? またあなたに会えますか?