: 7183
硝子の隙間を、通り抜けてた。 目敏い翅を風と共に、 私を探す音を聞いた。 戒めの声に、指を立てるのなら。 自尊心と嫉妬が、叫ぶでしょう。 燃やしつくされ、逃げてゆく、 鶸の口端で、 妖かしと、遊んでいた。 人の子は、笑っていた。 心の在り処を探し、捨てぬべき物さえ忘れ捨て去り、 いずこの扉へ、逃げて行った。 小さき声の妖精が、何千もの魂を、 ひとつの物語を描き出す。 徒然の日々と、遠ざかっていた。 誰かを憂う暇さえも、 無くなる気がしてしまって。 黄金の泉に、手を触れたとき。 悲しみと弱みが、溶けるでしょう。 漏らす息、似せた声、 うなりぐしゃぐしゃと、 顔だけが、笑っていた、 瞳だけが、泣いていた。 かつての居場所を潰してなお、 あなたの前に足跡が無くとも、 未だ何かの所為にするのですか。 失せ物が足掻いている、何度も蹴り落としている。 しばらく行方を晦ましても、 消えることはない。 あゝ、嘘を吐いてしまったようです。 また明日逢えますよ、 だから手を振って。 泣き顔のまま唄わず。 心の在り処を探し、捨てぬべき物さえ忘れ捨て去り。 いずこの扉へ、逃げて行った。 小さき声の妖精が、何千もの魂を。 ひとつの物語を描いて。 心の在り処を探す、摘んだ花の骸に口づけを。 残った翅だけが飛べる証拠。 小さな腕が伸びてゆく、行く宛のない悲しみを。 妖しい人の子が、笑って。 雨の音だけが、響いて。