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誰も いない薄明かりで、 跳んで行くかげおくり。 そんな 過ぎた事想っても、 何も、戻りやしないのに。 日が暮れた頃のチャイムが鳴り、 過疎化した屋上。 堕ちた 思い出は遥か彼方、 とんでいくのです。 いつだったか憬れた雲は、 もう暗くて見えなくて、 日の出づる頃、 僕たちは もう 別れてた。 時の 流れに苛まれながら、 生きてゆくのでしょう。 誰か 忘れてしまう前に 掠れた町へ向かう。 月の綺麗な 水面には、 なにが映っているの? 草のにおいが運んでくる、 符丁はどうにも解らなく。 憐憫に包まれたはこの中、 傘もささず歩いて。 消えた 土手道や畦道の憶は どこへいったの? 重なり合った二本の針は、 あさやけの無いこの町で、 日の出づる頃、 僕たちは 知る 真実を。 夜に 飲まれたはこにわの 怠惰が、 仇となって。 誰か 忘れてしまうのです。 シトリンに見送られた。 幽かに聞こえる金切り声が 呼んでいる。 ノイズ雑じりの霧雨が、 わたしを打ちのめしていく。 独り歩いた道、 輝いたのはあの星だけ。