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呼ぶ声が聞こえた、 一人で歩く僕のことを。 「気のせいか」と 振り返ると、 遠くにくじら座が見えた。 宵の口の除夜の鐘は、 夜の危なさなどを、 感じさせてくれたけど、 知らないふりをしていました。 帰りの道は 闇に満ちてて、 怖かったのを 覚えています。 たゆたう雲に 憧れてたら、 ゆうやけこやけの匂いがした。 まだ明るい時間。 じわじわ染まる東の空。 呼ぶ声は聞こえなくなり、 遠くの空にはいちばん星。 堤防で、 じてんしゃおして ようようとのびてく かげのあいだにかぜがふく 九月の生温かい風が。 帰りの空は とても赤くて、 眠たくなりそうな光で。 たなびく雲に 憬れてたら、 夕日の色にとけこんでた。 童の譫言は 誰も思い出せず。 酸化が進んだように、 朽ち果て 芥になるでしょう。 帰りの空は とても赤くて、 眠たくなりそうな光で。 たなびく雲に 憬れてたら、 ゆうやこやけの匂いがした。 帰りの空は とても赤くて、 眠たくなりそうな光で。 たなびく雲に 憬れてたら、 ゆうやこやけの匂いがした。 たなびく雲に 憬れた、 一人の少年が。