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何時か契った約束は、 蒼へと沈んで往く。 淡く光る其の亢宿は、 溢れ漏れ出た涙。 「行かないで」、喉を通らぬ。 竦んだ足と、 凍え果てた手。 何も見えなくなった世界は、 初雪の降った箱庭。 千切って捨てた思い出も、 絡まり合って空に溶けてく。 拠り所が飽和しても、 刹那に輝いていた。 「忘れないで」、喉も通らぬ。 醜く見えた、 濁る光も、 初めから何も在りはせずに、 花弁が舞い、 堕ちて征く。 心地よい風に吹かれて、 いつか臆する事すら忘れて、 気づけば流れ着いた先でも、 満ちた月も空も、 堕ちた感情の先までも。