ESUZERO
花曇 | 132 | |
2768 | 夢に見ていた 惜可夜の月を 雲の淀む空の下 過ぎ去りず光を待ちました 静かに揺蕩う桜の花 ただ独りだけ日の目信じて 夜に輝く 星は隠れて 夕焼けの色も知らぬままに 遠くくすんだ灰を眺める 夢に見ていた 惜可夜の月を 憂鬱を蝕む夜の凪 心を濁す様に 影を待ってた 花曇の空 悠然揺るがす寒の戻り 雲翳を追う様に 空を淀む雲の奥 希望の景色と思えます 消えることはないけど いつの日にか一度だけでも 天に靡かず 薄明光線 朝焼けの眩しさも知らずに 遥か彼方の海を眺める 夢に見ていた 暁の陽を 幽玄を貪る昏き街 心満たされずに 風を待ってた 花曇の雲 幽閉と見紛う暗き街 ただ佇むだけで 夢に見ていた 惜可夜の月を 憂鬱を蝕む夜の凪 心を濁す様に 影を待ってた 花曇の空 悠然揺るがす寒の戻り 雲翳を追う様に |
雪落 | 7 | |
211 | 寒い冬のことです 雪降る頃に 白い花が道端に 咲いてました 見たことがなかったので 気になりました よく見てみると蜜を 垂らしてました あまりに綺麗なので 摘み取ってみたら 閉じていた花弁が 開き始めた その瞬間 花が宙を舞い 降りしきる雪の中に 花は 消えてった 白い花は 雪の様に ひらひらと 舞って空に 溶け込んでく /白い花が何処からか /飛んできました /僕はそれを友達に /あげることにした 昨日と同じ花を/その花 友達に貰いました/はとても綺麗で 変わらず綺麗なので/雪の様な匂いと色をしてました 受け取りました/ その瞬間/その瞬間 花の蜜が漏れ/花の蜜が 友達の 触れた僕の体が/体に零れ出し みるみる/あなたの姿が 溶けてゆく/消えていた /白い花は /雪の様に /あなたの /体溶かし /土と混ぜる /白い花は /雪の様に /ひらひらと /舞って空に /消えていった |
雨帰 | 4 | |
158 | 寂れた駅舎の中で 帰りの電車待ち 息を吸えば湿気た空気 雨に濡れた前の髪 やがて来るは上り線 照らされる雨の形 下り方は未だ来ず 小暗がりの中微睡み ふと目を開くと 霞みゆく電光板 夢か現か抗いきれずに 虚ろの中に 見 た も の 眠気は止まず 朧気な視界に 見ゆ 肘笠雨 踏切の音 目を塞ぎ頭を そっと下げました 雨に打たれ靴は濡れ 到着のベルが鳴り 瞼裏に光見る 疾うに乾いた前の髪 何気なく聞き耳立て 届いた線路の音 「もうすぐ到着します」 液のアナウンスが語る ふと口を開くと 鉄の味がしました 夢か現か抗い続けて 虚ろの中に 目覚める 眠気は過ぎて 明瞭な視界に 見ゆ 俄か雨 ブレーキの音 立ち眩み ふらつき そっと歩いた 発つベルが鳴る 窓の陰る世界を 見た 通り雨 過ぎ去る景色 揺れる中頭を そっと下げました |