全てあなたの幻化です。
さざれ道 | 88 | |
1580 | 永く続く打ち橋が、 傷と誤解に引き込まれる。 明日はまだ来ないの。 ずっと応えていた。 霈然に消えた、 あなたの存在とは? 私の過去から落ちた、 浮世に囚われる。 鈴の音がした、 悴んだ耳に。 静かに日暮れを辿った。 街外れの後道は、未見な懸路で。 気付いていないはずだった。 |
未だ、見えていなくて。 | ||
859 | 宛先も見えず、 理由を探して迷い込み、 ガラスの痕に続いた、 問いが届きました。 烏喙を忘れても、 寝声は醒める。 朝焼けもない街並みに、 心を帰しながら、 明日を知らない曇り空に、 助けを求めていた。 幻を映す雨には、 手紙が眼に隠れていて、 全てあなたの幻化です。 未だ、見えていなくて。 |
雨催い | 361 | |
4990 | 辿った道は戻れずに、 闇世の中に取り込まれて、 あなたの声など聞こえず、 彷徨っているでしょう。 隠された意味を求めて、 骨身に応えて溺れていく。 まわりの中枢には見えず、 それゆえ舵を切る。 空虚になった、 雲を見ていた、 水跡を頼りに進んだ。 卑弱に溢れてた、 十六夜の間雨、 行く末知らず。 仕舞いに近づく日々でさえ、 懐かしく想うでしょう。 独り郷愁を見つめていた、 思えば遠くへ来ていたの。 停車駅に着いていたが、 雨靄は晴れぬまま。 零れ落ちていた、 罪を着ていた、 薫る秋風に消えていた。 正しい声さえも、 施す譏りの空に隠れていて、 仕舞いに遠のく日々なので、 均しく感じるでしょう。 卑弱に溢れてた、 星芒の間雨、 行く末知らず。 無謀に潜んだ水銀に、 気づかずに触れていた。 失踪、 モノクロを失った、 雨夜を視ていた、 戻れない処まで来ていた。 時雨、 甘雨、 夕立に去ったのは、 全てあなたの幻化です。 |
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1127 | 鎖された天頂狐が、 じきに枯れて邃に散る。 暮れた路傍の水を濡らして、 誰かに追われていた。 交えた影に糸を繋ぐ、 夜は消え水路を断つ。 ミゼラブルは月夜に沈む、 何も見えないのです。 終夕の褐藻灰が、 地縛に息を殺す。 誰も彼もが溟濛に帰して、 香匙は壊れた。 交えた跡に糸を紡ぐ、 夜は消え海路を断つ。 霧は覚めて夢魘は死する、 全てあなたの幻化です。 |