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穴を開けた両腕は、 猜疑心に断ち切られ、 二つの切断面には、 蛆虫も湧かないのです。 穴を開けた両脚は、 もはや記憶も失い、 嘗て脅かしたモノに、 怯えている様でした。 撃鉄の無い麻酔銃が、 誰を撃つのか分からず儘、 妄信と憎悪が、 牙を剝くのを見守るのです。 不快な音ばかりが、 交差するこの場所では、 過去の名前も、今の報いも、 その全てが意味を為さないのです。 知る事は罪であり、 知らぬもまたも罪であり、 目を開ける迄もなく気付くでしょう。 死に至る日を。 全てあなたの音です。 穴を開けた両腕は、 今や機能せずにいる。 爪も皮膚も腐り落ちて、 姿形を留めず。 穴を開けた両脚は、 歩く事も儘ならず、 此の世の言葉の意味など、 知る由も無いのでしょう? 陰を食らい、光を呑み、 それでも尚、欲に塗れて、 標的を定めて、 次の獲物を待ち伏せるのです。 他人を貶し、 自己をも貶し、 自ら縄で首を絞めたのは、 傲慢を餌にして肥大した、 被害妄想の、 末路でした。 不快な音ばかりが、 交差するこの場所では、 過去の名前も、今の報いも、 その全てが意味を為さないのです。 知る事は罪であり、 知らぬもまたも罪であり、 目を開ける迄もなく気付くでしょう。 可能性は無いのです。