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陽だまりの向こう側で、嘶いていた。 翼をもがれた烏達が、 毒林檎を啄んでいた。 さざめく雨音に、蠢いた身体は、 欲動と自我の間にまだ、彷徨うのでしょう。 見捨てられては、救われた、 色の無い眼の、 怪物は、嫌われていた。 怪物は自ら、命を絶った。 一条の光が、ぱっと差し込む誰そ彼。 それは宛ら、走馬灯の様。 幻だけを映し出す。 絶え間なく響く、遙か彼方の歌声は、 幾千光年先へと紡がれてゆく。 無機質さに囚われた、傍若無人は、 形代を被るその姿が、 如何にも気に入らないようで。 突然降る雨に、戦慄いた夜明け前。 何かを憾む事よりも、夢を見ているのでしょう。 心、思考、感情さえ、 忘れたままの少女は、 祈りだけを、捧げていた。 その祈りは、誰かに聴こえていますか? ひとりぼっちは嫌だ、 きっと、 届いてくれるよね。 ふと聴こえた幽き言葉、 「貴方だけを探している。」 雨水の音が、雑踏の中を劈いた。 こわがらないで。あなたのことをずっと、 見守っているだけ。 わかり辛かったね、“ごめん”だけを言わせて。 現実を見つめてる。/振り返ったその先。 暗闇の中惑う。/もう戻れないようだ。 お話の続きはまた、(明日ね。) 一条の光が、ぱっと差し込む誰そ彼。 それは宛ら、走馬灯の様。 幻だけを映し出す。 絶え間なく響く、遙か彼方の歌声が、 美しさへと変わるまで、 瞼を閉じて。 一条の光は、きっと貴方を照らします。 それは憂いが消え去る頃、 希望だけを与えます。 雨模様の空、乾いた頬を濡らす。 怪物は、笑っていた。 祈りは、届いたかな?