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達磨の期待が、 紙垂を破き割り、 峡を前に佇む仏にも縋る。 私の眼にはそれが見えずとも。 鳥居を背に佇む、 檻の三枚刃。 溶け出した甘い黒が、 迂愚を飲み込み、 幾何の朱い柱が、 坂道を成す。 故郷の香の香りを思い出したのに、 指先は動かなくなる。 消えても揺らぐ。 数多の光が細胞を語り、 推敲な安泰がそれをエヌか問う。 貴方の眼ではそれが見えずとも、 差し込まれた悪意が、 耳を腐すのです。 漏れ出した淡い黒が、 迂愚を飲み込み、 零列な朱い柱が、 坂道を成す。 郷愁に否定された快楽でさえも。 電極は動かなくなる。 肢体が揺らぐ。 侵し解かれた、 サンシの過剰。 歪むバイアス。 イサミの銅貨。 溶け出した甘い黒が迂愚を飲み込み、 幾何の朱い柱がそれを模る。 溶け出した赤い黒が、 迂愚を飲み込み、 幾何の朱い柱が、 坂道を成す。 故郷の香の香りを思い出したのに、 指先はそれでも動く。 視界が歪む。 鋭角が去れど。