: 3178
穴を開けられた両の手で、 漏れ出た黒い液を掬い取る。 得体の知れない温かさが、 傷口に染みるのです。 穴を開けられた両の目で、 青く輝く其れを見続ける。 柔らかな人工の光が、 静かに網膜を焼き切るのです。 荒れ果てた地に残る、 腕を千切られた振り子時計が、 今 終末の鐘を、 鳴らそうとして首を刎ねるのです。 不快な音も言葉も、 夢も記憶も感情も過去も、 顕在化した心地良さでは、 毒にも薬にもならないのです。 見えないモノを見たがり、 信じ難い事を信じ続け、 自我を取り戻せどすでに遅し、 死が迫るでしょう。 全てあなたの音です。 穴を開けられた両の手で、 有りもしないモノを掴んでいた。 其処に感触はある筈なく、 虚無だけが残るのです。 穴を開けられた両の目で、 漠然と外を眺めていたよ。 此の世に存在する全てに、 取るに足る意味は無いのですから。 影も陽も有らず、 ただ曖昧な光芒が照らし、 映された人々は、 善も悪も分からなくなるのです。 誰も終わり方を知らない儘、 誰かがそれを繋ぎ合わせていく、 誰かが意志を残そうとしても、 やがて無慈悲に黒く塗り潰された。 不快な音も言葉も、 夢も記憶も感情も過去も、 顕在化した心地良さでは、 毒にも薬にもならないのです。 見えないモノを見たがり、 信じ難い事を信じ続け、 沢山の影に囲まれて、 身動きが取れずにいた。