: 6568
既に失われた色覚で、 澄み渡る空を見上げる、 目を閉じればあなたの醜い、 横顔が映るのです。 既に失われた聴覚で、 漣の音に耳を澄ました、 当たり前が受け止めれず、 頭が蹲るのです。 灯火の下を瞬く覚悟は、 誰かの為で無く、 たった一つの命を、 蝕む為でした。 不可抗力に支配され、 停止した手足も動かず、 誰もに棲む赤い魔物が、 優雅に舞い散り錯乱させた。 見境無しに囚われて、 囂々たる囹圄仕舞われる、 其処から逃げ出すその施為は、 死に値する。 全て夢の様でした。 既に失われた触覚で、 あなたの指先に触れる、 気が付けばもう何処にも居なくて、 別れを惜しむのでした。 既に失われた痛覚で、 騒つく胸元に傷を入れた、 零れ落ちる血液すら、 美しく感じるのです。 わたしが成した愚かな行為は、 当然の報いと言えるのか、 行く先も解らず倒れ、 またやり直すのです。 ただ真っ直ぐに書き連ねた言の葉が、 迸る潮に流されて、 いつか、 まだ見ぬ花を咲かせ名も無き儘枯れてゆく。 不可抗力に支配され、 停止した手足も動かず、 誰もに棲む赤い魔物が、 優雅に舞い散り錯乱させた。 見境無しに囚われて、 囂々たる囹圄仕舞われる、 其処から逃げ出せずにやがて、 悶えて消える、 終止を迎えられずに。