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君がそこからいなくなってても、 誰もそこには辿り着けやしないのでしょう。 あなたがそこに居たとしていても 影は広がりゆくのです。 彼がここからいなくなっていて、 君は大きな何かに蝕まれるのか。 誰もここから出られなくなっても、 影はそこから消えてくのです。 体を蝕まれていく様だったのです。 路傍へと落ちていく水銀を飲んでも、 あなたは戻らず儘で。 気概へと変わっていくあなたの視線で目覚め 悔いてもそれは広がってく。 君がここからいなくなってても、 君も束縛から逃げてく、 その筈でしょう? 誰もここには存在しなくて、 厭けた化学は錆びていく。 焦げた快楽、錆び付いて減ってく。 真似た大きな影に触れて、離されてく。 刺した針から滑脱が出ても、 擦れた譫妄、 伐れてくのです。 何もかもが消えて往く様だったのです。 骸へと変わっていく彼を眺めていた。 彼等も戻らず儘で。 孤独へと進んでく私の視点は変わり、 弔意へとそれは塗り替わる。