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携帯の裏の、 フタを外し、覗いたら、 溢れ出した、 黒い光、 またやり直し、 また振り出しに。 ただ疎ましく、 ただ嫉ましく、 磨り硝子を通して見ていたの。 落ちたフタが砕けて、 元通りにならなくなったら、 黒い光が、 蝕み始め、 硝子越しの景色も淀んでゆく。 ノイズの雨が降り頻る。 逆さな儘の、 薄い布切れ。 そして何度も、 また繰り返す。 手紙は棄てられていた。 携帯を置いた儘、 暗い夜道を歩いたら、 溢れだした、 どす黒い水、 足を取られて、 数多、藻掻いて。 ただ緩やかに、 死を待つだけで、 与えられた責務も果たせずに。 漏れ出た液体に、 恐れを抱き、跪く。 あなたのことを、 ずっと見ていたの。 崇められた末路を、 見ていたの。 そして、未だ繰り返す、 逆さな儘の、 薄い布切れ。 ノイズが頬を、体を溶かす。 術を全て失った。 そして未だ、繰り返す。 逆さな儘の、 薄い布切れ。 ノイズが頬を、体を溶かす。 ██を全て失った。 鏡を覗いて、 悶え苦しんでいたのか。