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穴の開いた口は、 独りでに騙るから、 吐き捨てていても、 ここに誰も来なくて。 穴を塞ぐ腕は、 あなたへと伸びていった、 浮つく気持ちを、 忘れられない儘で。 通り過ぎた様に、 弾む様に、 うわべで隠していた、 熱を帯びた、 浮世に浮かんでいた、 見知らぬ窓があった。 駆けてゆく、 覗いてる、 うだつも上がらないから、 言葉で濁しても、 陰るから、 儚い指先。 数えても足りなくて、 今でも待ち遠しくて。 亡骸のあなたを、 待ってるから。 もう一人にして。 口を塞ぐ腕は、 逆さまに揺れるから、 はき違えていても、 呪う毎に気付いて。 変わり果てた腕は、 裏側に触るから、 壊れかけていても、 探し見つけるからね。 通り過ぎた様に、 葦の黄泉、 くらりと目が回った、 呼び続けた、 鵺のいる箱の方、 息の無い顔だった。 まだ覚えてるよ。 暗がりで崩れ落ちた、 捧げられていた、 じゃあね、 じゃあね、 じゃあね。 駆けてゆく、 覗いてる、 うだつも上がらないから、 言葉で濁しても、 陰るから、 儚い指先。 数えても足りなくて、 今でも待ち遠しくて。 亡骸のあなたを、 待ってるから。 もう一人にして。 息を零したのは、 どれほど辛い事なのでしょう。