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滅ぶとも知らぬ世の詩は、 街行く一葉の舟と化して、 差し向けられる怪火に 逆らう暇に、 はたと雨は止まる。 遇いも晴らすはずの踏襲や、 甘露を侵す手は枯れたようで、 かの感涙すらも幻なら、 肥える記憶など要らない。 かくあると聞いた誰かも、 仮の字を火に捧ぐだけ、 人一人生きてなどない此処で、 何を求められるのか。 矜持に泣き叫ぶ猩々も、 キの騙る由では石と同義、 きっと悦も感じられず 賽は投げられて、 そこにあなたが立っている。 慣例と似て病を追う春は、 憐れだと乱雑に顰めたようで、 まだ影があるなら戸を開けてと、 明日を告げながら泣いていた。 雷霆の波を抜ければ、 影印の雨跡が其処に在るが、 掠れた言葉には触れないで、 今でもあなたを探してる。 傘を穿つ双眸は何故、 寂しさを覚えているか。 隠喩の内側で冀う者は、 軸の無い だけ。 啼かない傀儡も旅立てる子も、 どうしようもなく無口なはずで、 軛が噛み付く歩みに、 異を唱えながら、 新たな名が追ってきた日は――。 表面をなぞるだけの痕跡も、 十五に調うべき懐旧も、 嘲る所以こそ其処にあらじ。 反転する日は遠のく。