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七月のある日曜日に お出かけしてみた そこは誰も知らなかった 森のなかのトンネルでした 光が流れ、影は動く 聞き覚えのある足音が まどろんだ耳のそばに 聞こえていた 振り向くのが怖くて 出口に向かって ひたすら前へ進んでいた 足が重くてだるくなり もう立ち止まるしなかった、ふと 懐かしい線香の匂いが どこからか漂ってきた そしてトンネルの出口から 亡き母の声が私を呼び寄せた 目を見張って 出口の反対側へと駆け抜けた 再び数えきれない 足音がトンネルに響き渡り 何十年もの夏を経て 次々と自分の影と交錯した 目の前に広がるのは、また 同じ森で、同じく炎天下 の日差しが降り注いだ 変わったのは 入口の規制線だけだった それを越えたとたんに 茂みの中に倒れ込んだ