: 1989
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誰も未だ戻りもせずに、 遠い海を眺めていた。 遥か先 船の行方は、 誰に聞けど識る筈なく。 彼方へと走る光は、 遠い空を眺めていた。 遥か先 夜の形は、 誰に聞けど判らず儘。 暖かい道に水の歌を贈る。 夢枕の様な心地良さに、 海岸の波の透き通った色に、 眩しい陽の光が差している、 呼吸の様に自ら扉開けて。 いつも但空を見つめて、 遠い星を数えていた。 遥か先 星の行方は、 誰に聞けど識る筈なく。 彼方へと「」(かぎ)も不「」(かけず)に、 扉を開け駆けていった。 遥か先 星の光は、 何処へ行けど離れていく。 海岸の空で星の花が咲いた。 もう少し近づけば届きそうで、 手を伸ばし空へ背伸びをして転ぶ。 空まで伸びてゆき花畑に、 夜空を照らすあの日に見惚れていた。