: 1818
見送られたその夜から、 また、櫓の灯は点る。 見れば眩しくて、 眼が白く染まった。 巡る四拍子を、 線香花火が指し示す。 霧が塞いだは、 幽かな帰り道。 薄灯を、 上書きした。 名も無い二等星に 不協和音が重なった。 猫股たちも酔い痴れた。 抑揚を殺していた。 鵺たちも捧げたこの唄に、 時が進む。 ほら、夜が明ける。 日が盛るまで、酔い痴れた。 からからと手の鳴る儘に。 仮初を眺む人の子は、 周、 愛されてた。 されど、雨は降らず。 青い視線が、交差する。 風が佒いだが、 白く、乾いていた。 ならば、絶えず絶えず、 祭囃子も薹が立つ。 黒く聞こえたが、 ひとつ、音を失った。 猫股たちは、知っていた。 故に、未だ歩いていた。 鵺たちに捧げる見送りは、 見えず、聞こえず。 ただ、日が沈む。 また、夜が揺れる。 日が盛るまで、酔い痴れた。 からからと手の鳴る儘に。 孤独を嫌った妖怪は、 揺られ、 霧に消えた。 花火は、 無味無臭で、 骨を蝕み尾を喰らう。 嘘を眺める人の子が、 亦、 踊っていた。 明け残るまで、うら泣いた。 ひゅうひゅうと音を立て、 うら泣いた。 可哀そうな妖怪さんは、 孤独と遊んでいた。 日が盛るまで、酔い痴れた。