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木々の隙間から覗くと 雨音に包まれた海水が 山の麓にある揺りかごの中で 岸辺の岩を洗い流している 遠くの都市は 厚い雲に包まれて 胎動を感じさせる湿り 参道には人影がちらほらとあり 私はそれに目もくれず 視線がたださまよっていて 雨とともに石苔の隙間に 染み込む その下には 私をここに捕えられた 土の響きがあった 冷たい空気が肌を痛める 雨に打たれた花が 揺らし続けて 槿花色が一面に散り敷いた 固くなった風を受け止めて 唇と歯の狭間で あわてて捨て去る 重なり合う言葉の渦を 私は再び聞こえるようになった あの鳴き声と 草に積み重なってる 数え切れないささやきを