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スマートフォンがバイブして目を覚ます。 心地良い音が聞こえ、 窓の向こうを見る。 灰色の、 雨が降り注ぐので、 悪い予感が脳裏によぎるのです。 踏切の奥の方、 高鳴る心臓の音、 雀の鳴く、 電線に目もくれず、 あの場所に急ぐのです。 乾いた心、 誰の所為でもなく、 向日葵がそっぽを向いていた、 身体に刺さる紫外線、 あともう少しでとどくのです。 スマートフォンで発信する信号、 元気のない音が聞こえて、 出口に急ぐ。 この雨は、 氷雨と呼ぶのですか? 彼も私と同じで雨が好きで。 傷だらけの机や、 誰かの殴り書きが、 彼の心に巣食う闇となって、 蝕んでいたのでした。 潤う心、 私の弱さであり、 優越感が襲うのでした、 全て私が悪いでしょう。 もう二度と出会えはしないでしょう。 紫のペンダント、 柿色の髪飾り、 空色の瞳とが、 黄緑の瞳とが、 私の心に深く刻まれて、 忘れる事は無いのです。 瑠璃色の花、 真っ赤な夕陽、 彼の瞳と反射していた、 淡い光のその先に、 あの思い出は消える事なく。