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牢獄の中で、佇んでいた。 赤色の灯が呼ぶ扉に、 気が付けば引き込まれていた。 雑然とした、空間の中、 世迷言と想いで、満ちていました。 知らぬ間に、気づかぬ間に、 生まれた軋轢が、 ゾウリムシを、苦しめた。 ゾウリムシは、震えていた。 形を保てたはずの、命が次々と。 失われてゆくのを、見ていた。 形式上の別れは、無意識下で冷たく。 涙を流すことは無いのでしょう。 自愛の心に、閉じ籠る程。 気持ちの悪い本質を、 露呈して知ってしまう。 他人の醜さを、嫌悪していれば、 疑心と嫉妬の念が、顔を覗くのでしょう。 愛さえも、悩みさえも、 下手な感情移入は、 己の身を滅ぼすだけで、 無意味であることを学ぶ。 秘密の穢された憾みを、手記に連ねていた。 息の詰まる夢日記さ。 忘れたくない思いが、楽しいはずだった日々が。 談笑も勘違いも、 可笑しくて。 嗚呼、もうすぐで終わってしまうのですね。 名残惜しい気もしますが、 これで良いのです。 籠の鳥雲を慕う。 命廃れる場所でも、希望はあるんだよ。 無垢な顔で、教えてくれた。 憂き目も傷も今では、ちっぽけだと信じれる。 後悔なんてもう無いでしょう? 形を保てたはずの、命や言霊も。 忘れていってしまうのでしょう。 かつてのみなの想いは、ばらばらになるけれど。 ゾウリムシに、別れを。 笑顔で「さよなら」を。