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浮雲が波間を漂ってる、 潮風に黒髪が靡いてる、 行先知れない海の向こう、 当てもなく見つめ続けている。 幼子の記憶に絡みついてる、 戯けてた仄甘い談笑が、 気づけば忙しい渡鳥になり、 思い出の片側を咥えて、 雲と戯れるように何処か羽ばたいてった。 言葉足りずに忘れ去れなくて、 いつの日にか舞い戻る気がして、 今日を照らす青空が朱く染まる迄、 唯、偏に、偏に、偏に、待ち望む。 浮雲は海の上を流れて、 潮騒の閑談を聴きながら、 名前も知らない街を見つけ、 雨となり地に馴染むのでしょう。 掴めずに揺れている惜別も、 心拍で掠れた備忘録も、 道路を見上げて広がる水面に、 棄てて仕舞えれば楽だろうに、 脳裏に散らかって未だに手放せずにいる。 言葉足りずに忘れ去れなくて、 いつの日にか舞い戻る気がした、 束の間の夕凪が静寂を運んで、 塩辛い潮が心を撫でおろした。 月夜烏が鳴いて流れ星が堕ちて、 見つめている先で照れくさそうに、 赤熱してる大空のほとぼり冷めても、 唯、侘しく、侘しく、侘しく、待ち侘びる。 待ち侘びてる、 焦がれてんだ。