: 3654
: 334
温かくて長い夜。 目を開けるとそこには、 心地よくて静かに広がる闇です。 これまでの記憶は、 ただ無意味な言葉で、 引き延ばされ、 膝元に過ぎ去っていたのです。 蛍光灯が、 ちらついていて、 そこから湧いてきたものは? ここで、 もし窓の外へ歩み出してみたら、 まだ姿を見せぬ眩しい明日と、 絡み合うであろう。 そしてあちこちに隠れている、 蝉の声を聞いた。 むき出しの月光を見た。 膨れた空気に触れた。 それらが神経に流れ込む瞬間、 すべてに意味が生まれた。 もしこの蒸し暑い夜から、 目覚めなければ、 窓の外は変わらずに、 初夏の音を奏でていただろう。 ここで、 もし窓の外へ歩み出してみたら、 まだ姿を見せぬ眩しい明日と、 絡み合うであろう。 蒿雀、 水鶏、 眼細、 日雀、 雪加、 柄長が鳴いて、 月は流れゆく雲に包まれて。 藜、 青葦、 藺草、 岩菲が根を張って、 万緑の中、 全て貴方の所為です。