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誰もそこにいない事、 誰もが知っている、 誰かがそこにいる事、 誰も知らない。 誰かがそこにいたなら、 何かが変わるのか、 誰もそこにいないから、 きっとわからない。 それはヒトとは似ても似つかない何かでした。 /それは形のないものでした。 淀んだ海の中を泳ぐ、 出来損ないの魚もどきに、 手足が生えてきて、 ヒトを名乗り出したのです。 誰もそこにいない事すら、 誰もが皆知っているが、 誰かがそこにいる事を、 知る者はいない。 私がここにいること、 /悲しさと共にあることを、 気付いて欲しかった /誰かに知って欲しかったのに、 |「届かぬ死」 誰も気付いてないはずなのに /誰も気付かないから、 |「果てに」 誰かが見つめてる。 /死ぬしかなかった。 |「気付いてた」 それはヒトの形を模されたレプリカでした。 /それは形のないものでした。 淀んだ海の中漂う、 成り損ないのヒトもどきの、 脊髄が膨らんで、 意思を持ち始めたのです。