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冬が窓枠に 染み付いた桜色を通り抜けて 遠くから私を見つめている 湖畔には 裸木が静かにたたずんでいる 風が日光を絹のように 漉して流れる 私は考えた 死は蕾む花の甘美な後味で 生は過ぎ去った冬の影だと そして私は もう悲しみも喜びも出せず ただ春風に つぶやきを吹き落とす 澄み渡った空がまだ 芽吹いていない枝を透かして 細かく裂けて 吹き飛ばされるようだ 生ぬるい空気が心臓を 柔らかく包み込み それを大地に託した 私は考えた(私の熱く赤い血液が) 死は蕾む花の甘美な後味で(溶けて川の流れに沿って) 生は過ぎ去った冬の影だと(愛だとか感情とか失くなっていく) そして私は(キミのために編んだ古い) もう悲しみも喜びも出せず(言葉が胸を刺す) ただ春風に(背中を押す) つぶやきを吹き落とす(もう、想いは届かないから)