穴の開いた双の手で、 モノを掴み取ることは無く、 ただ手を伸ばそうとしても、 届く前に崩れるのです。 穴の開いた双の手で、 歪んだ声を治せはせず、 緩やかに破綻していく、 それを眺めているのでした。 私たちが忘れた、 とても醜い過去の産物。 記憶の中で美化され、 何時か消える日を 待ち続けている。 不快な音を鳴らし、 遺言すら残さずに、 悴んだ身体を見捨て、 忘れるしかないのでした。 異論すら認めずに、 盲信を続けながら、 目が覚めても間に合わず、 死に至るのでした。 全て意味の所為です。 穴の開いた双の目で、 此の世に触れることは出来ず、 最後の動き一つでも、 観測できやしないのです。 穴の開いた双の目で、 正しく歩むことは出来ず、 道を外れていることに、 気付かぬ儘でいるのでした。 深夜二時半に見た、 明日を模った亡霊が、 君の元に表れて、 短慮な烏で、 啄むのでした。 只の戯言と言うべきの、 虚偽を何故信じると言うか? 真実から目を背けるよう、 出鱈目だらけの針を刺すので。 不快な音を鳴らし、 遺言すら残さずに、 悴んだ身体を見捨て、 忘れるしかないのでした。 異論すら認めずに、 盲信を続けながら、 目が覚めても間に合わず、 気が付けば、 触れることも、 不可抗力と。