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硝子の向こうで、 羽ばたいていた。 渡り鳥が不意に落とした、 翅を拾った少女がひとり。 光に導かれて、 邂逅を果たした迷子は、 不思議さから出た聲で、 謡っていた。 その身体を託したのは、 一抹の不安だけで。 形だけが、蠢いていた。 形だけで、 事を成していた。 心の無いその感情を、 見えぬ様にそっと蓋をして。 稚拙な愛情を、 注いでいたのです。 幸せだけを願っている、 出来損ないの愚昧だけが。 その目に虚ろを着せていた。 言葉さえも、 心さえも、 いずれ腐ちて堕ちてゆくのなら、 見え透いた涙が、 幸せでしょうか? 温もりだけが降り注ぐ、 紅葉の舞い散るあの丘で。 いつかの形を乗り越えて。