: 757
あれは東の方、 噎び泣く声を聴いたから。 火蛇に彫りこまれた、 松の模様で鬱となった。 夢を見る。 覚えている。 確かなことは、 掴めぬまま。 夢を見る。 焦がれている。 其処にあるのは、 名ばかりだと。 灰汁を啜り、 痺れた味覚。 黒くささめく、 声忘れ。 杖に憑くが、 闌けない遺体。 割れた足では、 何もできず。 見えますか? 聞こえますか? 此処にいるのは、 凡夫であり、 得てますか? 分かりますか? 確かに其処は、 名ばかりだと。 閉じた地平と、 囚われた言葉。 表と裏に位置しているそれは、 二律背反の余儀なくし、 片手落ちで終わってく。 凍えた黒と、 動けない白痴が、 踊りで舞い夢を見ていたことで、 色が褪せたこの視界では何も、 何も起こらないだろう。 何も起こらないはずだ。