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泥のついた手は 薄い聴覚も滯はれず。 浸透した短沫に 腕をちぎり取られました。 泥の衝立は 希薄にも夢を結びつつ 点描の網膜が 翠色に染まりました。 濃延の光沢も 兼ねた琴の音も聞こえずに、 短慮に、 紅黄に花咲くのです。 まだ透明な月の 泣き声が知れ渡る。 なお濡れた鏡は まだ宿命を解る。 今も高鳴る 麗淡を忘れずに。 あなたがどこへゆこうと、 いつもあなたの傍にいます。 希望を蹴った句は 水面に記憶を書き留め、 網昧な展幕は 片時も演儀を躊躇はず。 棒の結託は 水色の憂限を欠く。 束ねた恍惚は 赫く音が刺さりました。 落としても、落としても 透き通った朝日に照らされる。 壊れた闔を また建くのです。 泥の付いた手は 水に溶け出して膨らんだ。 凍りついた鉄を 風に昇華させました。 泥の衝立は 空にぶつかって消えたんだ。 白くなった目が 蕩んででも見逃している。 まだ透明な月の 泣き声が知れ渡る。 あなたがどこへゆこうと、 いつもあなたの傍にいます。