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独り言を吐いた。 「白に隠れてしまうのだ、 閉ざされて消えてゆく。」 思い出せずにいた。 其れは只、 忘れ去られて、溶けてゆく。 まるで、落ちてくる雪の様。 其れでも、此の契り、 今でも、覚え続けていた。 喩え、此の詩が嘘でも、 誰も居ないとしても。 此の場所で、 何時迄も、 待ち続ける。 屋根の下で。 軋む細雪と共に、 追憶を眺めて。 届かない儘の景色は、 静寂へと、 孰れ、全て、誘う。 砂が落ちた時に、 見得た草木は既に視ず。 ランタンの燈に、 燃えた、世の振り出し。 在った筈の星々も 今や浮かぶは、 君の時化た泣き顔だけで、 五つの悪いウワサだけが残る、 ただ、それだけ。 常世、撹乱に落ちて蟬脱した迷い人。 悴み、 震える、 私達の、 わたしの声。 寒空の下で聞こえた、 詩を斯き重ねて。 追憶の華を拓いて、 思い出して。 あの日の事 もう手遅れ。 君が居た、 其の痕跡すらも、 消えてゆくでしょう。 何もないの。 華の意味を食む。 君は何処へ。 喩え、此の詩が嘘でも、 誰も居ないとしても。 此の場所で、 何時迄も、 待ち続ける。 屋根の下で。 軋む細雪と共に、 追憶を眺めて。 届かない儘の景色は、 静寂へと、 孰れ、全て。 喩え、此の詩が嘘でも、 誰かが居たのならば。 この意味は、 儚くも、 守られたの。 屋根の下で。 契り、細雪と共に、 最期には、結わいて。 閉ざされた儘の景色が、 溶けていった。 ウワサだけが残った。