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羇 | ||
5736 | 羇に言うところ、 彼は来ないでしょう。 私は蠱惑を反芻し祈っていました。 羇に言うところ、 鶴は来ないでしょう。 位置と位置を繋ぐ人がやってくる頃まで。 鉄が解く匂いが、 積もる雪を溶かした。 轟音。狼狽えたが、 なにもかも遅くて。 黄丹と白の、 車両が目の前を。 がらん、がらん、 と音を立て。 線路の向こうと こちら側を、 彼世 常世 に分かつ。 紀に言うところ、 路は止まるでしょう。 顕現を均す天秤の元に、 紀に言うところ、 模倣する者に、 傍観と人の理を。 情動の誘引に、 地を破る狐の子。 片手に空いた穴は、 紀を赤くするから。 不死鳥の羽が、 やがて声になる。 羇の足を絆す。 そして重なった声はもう、 二度と聞こえなくなる。 ノートの重さには、 笠は耐えきれず、 西へ往く列車は、 羇となる。 黄丹と白の、 車両が目の前で、 がらん、がらん、 と泣いた。 俗世を2つに 裂いたあなた。 全てあなたの所為です。 |