雨溜まりの音
ばけねこのふみきりをしっていますか | 54 | |
2486 | その踏切越え向こうへ行くと 大きな猫に会えるらしい 興味本位で近づいてみると 遮断機がおりたので くぐり抜けてこちらを睨むへびを 横目に渡りました 街の灯りが消えて星が堕ちぼくの身体に当たるのです なぜ誰もいないのですか それは猫に食べられたから ああ 大きな牙剥いてぼくの方へじわりじわりと寄ってきて 頭の先の方から齧ってそこで 目が覚めた これは夢だ 古い街の外れの先/めがみえないよ /おぼろげにしる 大きな人が声を荒らげ叫ぶから/まちはころしつづけた くぐり抜けてこちらが捕まる前に この身を守りました /まちはころしつづけた 遮断機がおりました 数多 生命が燃えて月が満ち墓標の花が枯れたのです ならば問うてもよいでしょう その目で見た底の無情を あさやけだけある街で眩んだから 匿うように消したのです こわがって去ったとて また繰り返す 人は夢を見る ああ 大きな声でなく ないたら引きつる 灯りが戻ってくる なぜ誰もいないのですか それは猫に食べられたから ああ 雨溜まりに映る いつか見たあの子の顔が映るのです なぜ誰もいないのですか それは猫に食べられたから ああ 大きな牙剥いて奪った 遠く近い踏切の向こう (こわくないよ きみだってしっているはず) こわくて目をつむった 街は今でも繰り返していますか 長い現実を (そのすがたは そう ぼくとおなじ) |
かさのしたないたのをしっていますか | 54 | |
1776 | 膿んで病む両耳で貴方の声をきく 遠く近く姿は表層の霧で隠れてる 仄かに残る微熱 頭蓋の内に洩れて 出来の悪い肢体が溶ける様をただ眺めていた 貴方の目前塞ぐこの傘は何かから守って 地球が静かに眠るまで 薄く雑ざるように 雨が降る ほら しとしとしとりと落ちるのです 濡れるはずがないのに 足許の現実より早く川から海に流れ 潜り沈んだ 産んでから良質さを あれから欠いたまま 隣同士損なう表裏一体の騙し合いを 貴方は悲観しない ただの一度たりとも 出来の悪いわたしが まるで骨ごと腐るみたいね 在りし日の2人は隙間から世界を盗んで気取る 星の宿命が何度でも例え心の値を 分かつとて あの踏切の先のその奥に ずっと晴天の街があるの 陶酔して ほんの1cm程度の卑怯に 溺れる前に 雨天で尚も霞む母より重い罪 それで何を語るか 身体が冷えていく あの踏切の先のその奥に 涙を酌む街があるの 倒錯した傘の下 泣いてもいいように ほらしとしとしとりと落ちるのです 濡れた目蓋を綴じないで見て やがて知るでしょう 隣人を愛して人は理想を見る |
びるずじょうつながるのしっていますか | 30 | |
746 | 「逆さの街にはいけないよ 踏切を越えても無いんだ」 然しそれでは 幻視だったわたしの目に映るのは 知らない貴方がビルから見下ろす運命を 知らないわたしがまた見下ろして値を分かつまで まだ知らないで この地球の昨日のこと 泣いて溜まる雨が膿になって 人魚が地上で呼吸をする 駅のホームに穴があいたら今日もいつか来る ユメで廻る街にはいけないよ 乾涸びて喉が張りついた もう空の青さは霞んで消えますか 目が見えないよ 止まるように揺れたアスファルト 今は眠っていたい(欠伸をして目を覚ます) 知らないわたしが重なり合うちょうど一点を(脆弱になった朝足掻いた) 知らない貴方がまた見定めて(人魚の背鰭は硬くて) 断ち切る術もまだ知らないのに(断ち切る術もまだ知らずに) 穴から覗いてしまったの(穴から覗いてしまったの) 然しそれでは 幻視だったわたしの目に映るのは 泣いて溜まる雨が海になって 人魚が地上で呼吸をする 駅のホームの穴から覗いたら 昨日を知れた 逆さの街にはいけないね 踏切の先に猫がいる もう空の青さと同じくらい赤い目じゃ見えなくて 泣いて溜まる雨がビルを造り 指の先端から明日へいく もう今日は青さで霞んで消えたけど ほら人は現実を見る |