皆、底に沈んだ。
濁世[short] | 26 | |
766 | 草葉の陰の傍観者が、 罷る徒人を土に還す。 遣らずの雨音を、 あなたは聴く。 旦夕に迫る空蝉が 正鵠を射れず影の中。 鬱鬱怏怏の中 血声で啼く、 濁世の目。 悲歌慷慨する雨や雨、 水に燃えたつ蛍となる、 不知火に縋る他律に動かされ。 晦冥の亡骸。 眩む東雲は無我夢中、 黝い彼岸は枯れていた。 退廃的に 爛れていくモノ。 蒙昧に縋る四辺形、 会者定離の規は廃れ逝く。 籠絡された淡い血液の先、 崩れ往く。 咎められるべき寂寥が 暮れる縊死の中 憂鬱で 消えることのない咎人の記憶が、 皆 底に沈んだ。 |
行燈[short] | 31 | |
650 | パンドラに招く細波達が、 遍く灯りに目を伏せず、 送り火が急く硝子の箱、 誰が去ることになるのでしょう? 体は溶け、 意識も軈て、 解けて欠けて往くのです。 天離る橋渡し、 振り向いてしまう。 私は霞みました。 近付けもしないのに。 劈く移ろい、 臥し悶えて、 誰も彼もが孰れ、 水底に沈むのです。 パンドラに招く細波達が、 |