さめまつ
小判雨 | 6 | |
292 | いつの日だったか 夕方に 雨が降り出したが それ以来 空は雲に覆われ 日が出ずに 植物は みんな枯れた 雨は 徐々に色を変えていき 極彩色になってから 彩度と明度が低くなり 灰色になったとき 町は凍る この雨は 絶対降り止まない 皆びしょ濡れで街を歩くのだ 雨が 降り続けて もう何年 雨に濡れて 風邪をひく 何年経ったか ある朝に 灰色の雨が 降っていて 雨に触れた 人も猫も家も電柱も 皆固まった ある人はそれがサメに見えたようで ヘルメットを被りだした トンネルの先の小さな町 灰色の雨が降る街 やがて 町は全て凍ってしまい 怪物の獲物は なくなった だから奴は トンネルに住み着いて 穴に落ちた 人を食べた その様子をボクはずっと見てた 屋上の上から観察してた その様子をボクはずっと見てた 屋上の上から観察してた その様子をボクはずっと見てた 屋上の上から観察してた その様子をボクはずっと見てた 屋上の上から観察してた |
ろじがあかいろ | 6 | |
321 | 友達に誘われて この街に歩いてきました 県道を12キロ 生ぬるい風を浴びました 熱量を持った信号が 歩くわたしを睨みました 質量を持った鉄蓋が 焦げた地面に叩きつけるけれど かえるが鳴くので 声はかき消されました 連絡の取れない友達を 探していました 水槽を泳ぐ心臓が 歩くわたしを摘みました 荒れた波を放つ喉に 触れた誰かが泣き崩れるけれど ヒガラが鳴くので 声はかき消されました 冷気が家を包み わたしを閉じ込めました 友達に誘われて この街に歩いて来ました 12時になったので 防災無線が鳴りました 廃屋が残る売地から キリギリスが飛び出したので 驚いてすぐに避けました 鬱蒼とした庭に立ちすくむけど 君がないたので音はかき消されました 冷気に閉じ込められた わたしは崩れてました |
亜寒帯 | 93 | |
1375 | これからどこへ行こうか そう遠くは行けないか 出来かけの町を捨て 外に消えようか 疾うに雷鳴は線の向こうでした。 籠の鳥は逃げたと聞きました。 早い早い雲の上は何が見えるのでしょうか まだ地を這う私 見捨ててどうか 凍えて 昨日が消えた夢で 焼べたあなたが居た クロマツの芽が出て 絵が消えました 曇り空がもう見えなくて 昼下がりももう何も叶わない 白い白い闇の中で花に喰われてしまったら 灰になる二人を何かが止めたので 冷えた僅かの物語を 連れて歩く 出来かけの身を捨て 外に消えようか |