絡まった電線が解けなくて、 屋上に夜明けの晩のチャイムが響く、 還り道、ヂリリと左の方で、 ベルの音が聞いて欲しそうに鳴った。 小さな窓があり、 真っ赤な屋根の、 電話ボックスが手を招き、 出鱈目な抑揚で、 声をかけてきたのです。 ぬめりとした呻き、 穏やかな不協和音、 ガチャリと折れる腕、 箱の中の鵺の鳴く声に、 耳を澄ましてはいけません。 枝のない電子が流し込まれて、 侵された合目的的ヘモフォビア、 手回しの自我意識が腐り落ち、 底なしの静寂に骨身を浸す。 三なる兆候に、 気づかないまま、 光ソリトンの赤い灯が、 でまかせの衝動を、 仄めかしてきたのです。 不明瞭な愁い、 歯と歯が重なった音、 ガチャリと閉まる喉、 三寸五分の煙突の方、 目を合わせてはいけません。 小さな窓があり、 真っ赤な屋根の、 電話ボックスが手を招き、 出鱈目な抑揚で、 声をかけてきたのです。 ぬめりとした呻き、 穏やかな不協和音、 ガチャリと折れる腕、 箱の中の鵺の鳴く声に、 不明瞭な愁い、 歯と歯が重なった音、 ガチャリと閉まる喉、 三寸五分の煙突の方、 二度と聞こえはしないのです。