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「すべて投げ出して 消え去りたい」と 呟いた声は ばればれな嘘 「救われたい」心を隠し 虚(きょ)は翔ける、暗夜の中。 朱色が 褪せた 鳥居を くぐって ひびわれた パイロン 蹴飛ばし、逃避。 五里霧中 頭の中、 突然 響いた 声。 「常世に 味(ミ)が ないのならば 永遠(とわ)に 揺蕩(たゆた)う川を 越えて 私の全て、噛みしめて。 何もかも忘れて、さぁ―――」 「ヨモ」 眺める 詩人(しびと)を 招く 晩餐が 匂い 放つ。 「戻れない」と 知りながら なお 木の実(このみ)が 落ちてくよ。 「ヨイ」が 廻る 詩人(しびと)が 歌う 晩餐は 美味 奏でる。 「戻りたい」と 気づいても なお この身は 堕ちてゆくよ。 「それでも 何かが 満たされない」と 轟いた声は まさしく呪詛 「思い出したい」心 むきだし 憚(はばか)る 暗夜の中。 ねじれ 曲がった 標識(サイン)を 無視して 悪臭 漂う トンネル 越えて たどり着いた 河辺から 懐かしく 響いた 声 「お腹が空いて いるのなら 躊躇わずに 喰らうがよい。 かまどの中で 温めた 一塊の肉を さぁ―――」 時の 流れ ちょんぎりながら 黒鮪の 針が刺さる。 満たされない 飢えに溺れて 踊り 歌り 喰らう。 小石の山 蹴飛ばしながら ヤツメさえも 喰らい尽くす。 名前さえも 忘れてもなお 踊り 歌り 喰らえ。 「ヨモ」 眺める 詩人(しびと)を 招く 晩餐が 匂い 放つ。 「戻れない」と 知りながら なお 木の実(このみ)が 落ちてくよ。 「ヨイ」が 廻る 詩人(しびと)が 歌う 晩餐は 美味 奏でる。 「戻りたい」と 気づいても なお この身は 堕ちてゆくよ。