木漏れ日、埃を被った写真立てには、 誰もが忘れた記憶があるのです。 窓際、冷たい風に吹かれた信号、 曇った空から雨が降り始めた。 それでもこちらを見つめるあなたがいた。 灰色の世界に色を着けたのは、 他でもないその偶像の視線です。 手を伸ばしてもそれはすぐに消え去る。 空から落ちて体がぐちゃり、潰れていくのか。 ヘモフォビアの上、 一人、二人、死を選ぶ姿を、 晒されて虫にも値せぬ命は、 終焉という名の、 深淵を目にして、 覚悟を決めたのでした。 早朝、飛び立つスズメの親子が見え、 壊れたレコードを眺めて思い出す。 明るさが持つ暗さに気づかぬままで、 わたしは鍵を握りしめてみました。 それでもあちらを見つめるわたしがいた。 カラフルな世界の色を消して行く。 他でもない天狗の疑惑によって、 手を伸ばすことも出来ずに離れ行く。 地面へ落下し視界がぐらり、上下に回った。 ヘモフォビアの上、 一人、二人、死に至る姿を、 剝がされて虫すら寄らぬその命は、 脊髄という名の、 神経が腐って、 ピリオドを打つのでした。